去年、加納伊都さんという素晴らしいヴァイオリニストの方とお知り合いになったのですが、その方の年末のクリスマスリサイタルに合わせていくつかのイラストをご提供させていただきました。
伊都さんは毎年みなとみらい小ホールでリサイタルを行なっており、前回がその15周年目でした。小ホールといっても400人くらい(?)は入る素敵なホールで、伊都さんの複雑で重厚な音色が響き渡り、一緒に演奏されたピアニストの方との息もぴったりで、とっても素晴らしいリサイタルでした!
伊都さんは横浜市出身のヴァイオリニストで、ウィーンやロンドンなどで経験を積まれ、国内外でご活躍されています。
私はあまり音楽には仲良くしてもらえず(一応フルートとピアノ経験は少しあるものの・・・)極めて一般的な耳しか持ち合わせていませんが、伊都さんの音色には様々な感情が複雑に表現されていて、私は宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」を思い出しました。音楽家にとって、テクニックはもとより、たくさんの人生経験がそのまま音色の魅力となり、人々の心に届くのだと思います。
そしてまた文章の才能もお持ちで、HPで読めるウィーン留学時代のエッセイが面白すぎたり(是非読んでほしい!)、別のコンサートで聞いた、ウィーンからポーランド(?)に陸路で演奏に行くのに、パスポートを忘れて国境で拘留されてしまった話とか・・・。まぁその時は本当に笑えないんでしょうが、今になって笑わしてもらっている私などからしてみれば、妙にネタにも愛されたヴァイオリニストなんだと思います。それもある意味では、才能・・・?笑
伊都さんの写真を絵にするにあたり、最初はきちんと似せることとか、正確なプロポーションで描くことばかりに集中していたのですが、だんだんとそういうことではないと気づき、その音色の美しさを表現しようと思った時、必要な線の数はどんどん少なくなりました。CDを聴きながら、生き生きとした演奏がまるで羽が生えたようだと、最終的には天使のような絵になり、ご本人様にもとても喜んでいただくことができました。計らずも、クリスマスのプログラムによく似合う作品になったと思います。
ちょっとだけ制作の裏話ですが、インクに筆を浸し、わざとかすれるくらいにドライに水分を取った後、先に髪の毛やドレス、羽の部分を描き、その後インクペンに持ち替えて顔や腕などの線を加えています。微妙にずれているのはそのためなのですが、これが版画のような偶然性を生み出し、自分の「意図」の外側に出ることができました。いつも思うのですが、自分の思い通りに仕上がることほど面白くないことはなく、どうその壁をぶち破れるかなんですね・・・。これは色々なことに通じるのかなと思います。結果とっても引き算の絵になりましたが、改めて色々と勉強になったお仕事でした。
伊都さん、ご依頼ありがとうございました!
みなさんも伊都さんの演奏ぜひ聴いてみてくださいね!!
加納伊都HP: itokanoh.com