いつぞやアマゾンという某大手サービス会社に騙されて(?)、気がついたらプライム会員ということになっていた。お金を払った以上は元を取ってやろうという負けず嫌いの貧乏性で、最近やたらと映画を観ている。それまでは家では半年に1本観ればいいところだったけど、最近は多い時で週に5本・・・十分元は取れたもよう・・・。
毎日続けざまに映画を観ていて気がついたこと。それは、
「映画って、料理だ。」
料理長は、映画監督。
今までは俳優が圧倒的にすごいと思っていたけど(そして確かにすごいのだけど)、監督こそ、映画の真の味を決める人なのだと理解したらなんだかしっくりきた。
それは、うまいと思う映画を4本くらい観た後に、いまいちと思う作品を1本観たときの気付き・・・。この女優さん、別の映画ではもっといい演技してたのに、全然引き出されてないなって思って、そっか、俳優さんて実は鶏肉や人参のような「素材」なんだなって(すっごい失礼だけど・・・なれもしないくせにね)、その味を引き出すのが監督の力量なんだなって、そんな風に解釈したら、色々と辻褄が合うような気がしてきた。
例えば、
キャスティングは、仕入れ。
脚本は、レシピ。
カメラや機器は、調理器具。
美術は、器やテーブルセット。
照明は、うーん・・・火加減で、
演出は、調理補佐かな?
メーク・スタイリングは、仕込み。隠し味。
音楽は、スパイス。ドキドキさせたり、うっとりさせたり。
編集は、盛り付け。
映画館は、レストラン。
どうかな?
(・・・いやそこは違うとか、もっとこうじゃないとかいう方、ぜひどこかでワイワイ言い合いましょう!)
うまい料理長は、素材をなるべくそのままの味で自然に調理する場合もあれば、骨の髄までスカスカにして旨味を引き出す場合もあるけど、どちらにしても全ては最高の一皿のため。時々そこまでする?っていうくらい俳優を追い込んで、絞り込んでいる作品があるけど、あれは料理としては極上のブイヤベースなのかな。
新里哲太郎くん(通称テツ)という大学時代の同級生がいて、留学中に演劇を始め、日本に帰ってきてからもずっと下北沢ベースでお芝居を続けている数少ない不安定コースの同志(?笑)。でも最近では演出もやったりと、お芝居で立派に生活しているみたいだから、私なんかとは比べ物にならないご活躍よう!昨年末に久々に連絡を取る機会があり、「主演で芝居するから良かったら来て」と教えてくれたのが「蛇の亜種」っていう演目だった。
レビューが良かったからただ楽しみに行ったら、本当に素晴らしかった!テツの演技は以前よりもパワーアップしていて、というのは、むしろいい意味で力が抜けて、テツが抜けて、役が生きている・・・。
役者っていうのは一体どういう感覚なんだろう?あんなに身の全てを人前に投げ出せるというのは。ある意味非常識で、恥知らずの恐れ知らず・・・むしろ恐れに向かって行く好奇心の塊・・・。
「役者は素材だ」なんて乱暴な表現をしてしまったけど、テツを観ていたら、本当に調理されるがごとく少しずつ身体の部位を失っていくという難しい役柄。ヤクザな主人公マムシ(テツ)が「お嬢」なるヒロインを守るため、怪我をしたり身体を売ったりしながら逃亡するというストーリーで、まず片足を引きずるようになり、それから片腕を失い、片目を失い、もう片方の腕も最後には失ってしまう・・・。ストーリーはもとより、舞台装置、照明、他の演者さんから何から、本当に見事に構築されたお芝居で、私は最初から最後まですっかり魅せられてしまった。それにしても、本来は動く体が動かないというつもりで動くってどんな感覚なんだろう?身体で表現する人の、その身の全てを提供する様は時に引いてしまうほど恐ろしくもあるけど、どこか、自意識から解放されている様がまた羨ましくもあったりする。
新里哲太郎くん、ぜひチェックしてください!
・・・さて、そんな偉大な調理現場のどこにも参加できない口だけの私は、観るだけ観てモグモグし、心の中で勝手な食レポをつぶやいている・・・。
新里哲太郎オフィシャルサイト:
https://tetsutaro-producetheatre.themedia.jp
Twitter: https://twitter.com/ajtetsu
インタビュー記事発見!:)
http://illuminus-creative.net/magazine/?p=6205