コロナが広がりを見せ始めた頃、どこかのコメンテーターが、「3、4年は中世のような時代を過ごすことになる」と言ったのを聞き、不謹慎ながらもちょっとワクワクするような気持ちになったことを覚えている。
国内でしか移動できなくなるなど、経済圏がグッと狭まることをその方は表現したのだけど、私はそうかと、案外すぐにその来るべき世界観を受け入れた。飛行機でビューンよりも、馬に乗ってのんびり巡礼旅行(←「カンタベリー物語」のイメージ)、みたいなスピード感の緩みは、私にはホッとできる感覚の方が大きかった。(ちなみにそのコメンテーターが3、4年と見積もったのは、ワクチン開発にかかる時間を想定したからで、実際にはもっと強引とも言える開発と実用が行われたわけだけど。)
私がアフリカからアメリカの大学に戻ったとき、主専攻をアート(ドローイング)に変更するのと同時に、副専攻も取らなければならず、中世・ルネッサンス文学(Medieval and Renaissance Studies)を選択した。興味云々よりも、その組み合わせが最速で卒業が見込めたからだったけど、結果的に、アートという何かを生み出す(output)課題ばかりに追われている自分とバランスを取るかのように、読む(input)という課題がいい気分転換となり、思っていた以上に副専攻の授業を楽しむ自分がいた。読んだのは「アーサー王と円卓の騎士」とかチョーサーの「カンタベリー物語」、ダンテの「神曲」(これはルネサンス期かな)とか、あとはファブリオー(fabliaux)と呼ばれる馬鹿げた小噺も色々。これは当時からB級の読み物で、でもある意味普遍的な人間のリアルが垣間見れて面白い。
中世文学をそこそこ楽しんだので、中世と言われて少し親しげな気持ちになるのだけど、実際ヨーロッパの中世は暗黒時代(Dark Ages)とも言われたりして、文化もなかなか発展せず陰湿で殺伐としたイメージ。その後それに反発するように明るく輝かしいルネサンスの時代がやって来る。
例のコメンテーターの予言通り、あと1年半くらいは中世のような時代を過ごすのか、それとももっと早くに次なるルネサンスがやってくるのかはわからないけど、小さな経済圏を人々がそれなりに生きてきた中での今回の戦争は、21世紀に見る景色としてはあまりにも悲しく、馬鹿馬鹿しい。コメンテーターの予測を裏切り上回るように、中世時代は長引いていく、かもしれない・・・ヨーロッパの中世は1000年続いたんだって・・・。どれだけ続くかわからない中世時代、明けるのをただじっと待つのか、それとも、できることをやっていくのか。
考えようによっては強制的に与えられたチャンスかもしれない、とも思う。輸入品に頼るのをやめて自分たちで生産する。近くの人たちから買う。資源や環境を大切にする。
命の尊さを知るには、あまりにも代償が大きすぎるけれど・・・。
・・・って、私もっと実用的なこと書こうとしたのに、今回はシリアスになっちゃった。
電気を再生エネルギー100%の会社(みんな電力)にしたのです。安価な輸入エネルギーが危うくなってきてようやく行動に起こしてるんじゃ、全然意識低い系ですけど。遠くの国の地中深くのエネルギーに頼るより、頭上のお天道様や風や水に頼るのって、なんか中世的でいいなと思って。中世に見習うところも当然たくさんあると思います。
また書きますね。