お金の話第2弾。
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さて、権力者になりたいハナエは(この暫定キャラクターをどうしていくかは今後要検討)、現行世の中のどの場所でも受け入れられているとある慣習を見習い、素晴らしいお金儲けの方法を考えました。
高速道路の真ん中(一車線で交通量の多いところを注意深く選び)に車を停めて、「先に進みたければ私にお金を払ってください」と、運転手一人一人に手を差し出すのです。急いでいる運転手たちには、ハナエと議論するほどの時間がありません。一方のハナエには、腐るほどにたっぷりの時間があるので(え、これは事実←)、先に進むため、やむを得ずこの通行料とやらをハナエに支払うことに同意する運転手たち。悔しげな者もいれば、「通れてありがたい」とハナエにペコペコ頭を下げる者もいるのでした。こうして来る日も来る日も、時間だけはあるハナエは、ただひたすらに高速道路の真ん中に車を停め、通行料を請求し、無事お金持ちになったのでした。
チャンチャン♪
・・・っていう話が仮にあったとして。
おそらく、というか絶対ですが、割と早い段階で運転手の一人が警察に電話して、「イカれた暇人女が高速道路に車を停めて渋滞を巻き起こしている上に通行料を巻き上げて人々を困らせてる」と通報することでしょう。
笑
・・・正解!
・・・なんですが。
全く同じようなことが、現行のお金というシステムではさも当然のようにまかり通るのですから、この話を読みながら笑っていた誰一人ももれることなく、この話の中ではハナエに通行料を手渡していた人間の一人ということになります。
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お金というのは基本的には世の中を循環することでその役割を果たす道具に過ぎないのですが、何度も言いますが、他の全ての物質と異なり、お金だけが腐ることなく貯めておける上に、利子によって増殖することができるという不思議な性質を持っています。
お金は公共のもの(誰かの名前が書いてあるわけではなく、常に持ち主が変わる)であることを、ここでは高速道路に例えています。高速道路は急いで移動するニーズのあるみんなのものです。高速道路が使われることで、経済はより滑らかに循環するとも言えます。
お金には三つの機能が備わってます。交換手段の機能、価値の保蔵機能、価値の尺度機能。
なーぜーかー、お金にだけ、この二つ目の、価値の保蔵機能というものがとても有利に働いており、たとえ使い切らなくても、持っていることで何も損することがないのです。例えば、これがりんごだったら、腐って臭いが発生してハエが集るようになったり、衣服だったら虫に食われたり、流行遅れになったりするのに。お金だけは、たとえ破れたり穴が空いたり、肖像画の人物が変わっても、銀行に持っていくと新札に生まれ変わるという特性を与えられています。
それだけでなく、使わず取っておいたことで社会に不足を生み出し、お金を今すぐ必要とする者に、「欲しければレンタル料込みで貸してあげるよ」という、お金をお金で貸すという謎の商談が成立してしまうのです。このレンタル料が、いわば利子です。ローンや奨学金というものは、一般的にこのようなレンタル料込みで貸し出されるものなので、ここで、貸す者と借りる者の間に力関係(格差・権力)が生じます。ちなみに、自分は誰からも借金をしていないと思っている人も、実は全ての人がこの利子を背負って生きています。全ての売り買いされる商品やサービスには、このレンタル料分も上乗せで値段がつけられているのですから。
問題なのは、お金は公共のものであるのにも関わらず、なぜか私物のように扱われることがあるということです。これが問題でないというのなら、ハナエが高速道路をさも私道のごとく扱ってもいいということになります。・・・私道でもタダで通らせて欲しいけどね。
今回はここまで。
参考:
河邑厚徳+グループ現代著『エンデの遺言〜根元からお金を問うこと〜』NHK出版第15版, 2000年 pp.226-231
本も素晴らしいけど、この本の元となったNHK制作の同名ドキュメンタリー動画を観るのお勧めします!画質粗く内容として古くなった部分もあるけど、イントロとしては理解しやすいです
→ NHKドキュメンタリー『エンデの遺言〜根源からお金を問う』1999年